16:30/涙の理由
朝からずっと離れずにふたりで過ごした日。
たくさん愛し合って抱きしめ合いながら、ふとベッドサイドの時計に目をやった。
16:30。
ああ、永遠に終わりがないように思われた愛しい時間を、もうすぐしまわなければならない。
今日はまだシャワーをあびに行く素振りをしない、
もう少し、ゆっくりいられるの?
…まだ帰らなくても大丈夫なの?…
という言葉が頭をよぎった途端、
何故私がそんなことを気にしなきゃならないのか、私とは違うところへ帰っていくことなど、何故いま、せっかくふたりでいる貴重な時間に考えてしまったのだろうと、自分自身に激しく腹が立った。
そして、その現実をどうすることもできないことに悲しくなった。
離れたくない。
ずっと一緒にいたい。
私以外の誰にも「あの人」に触れて欲しくない。
もっと、ずっとこうしていたいのに…
そんな思いが溢れてしまった。
何かひとつ言葉を発したら号泣してしまうことはわかっていた。
でも言わずにはいられなかった。
「あの人」に包まれながら涙を静かに流し、背を向けて丸まって声をあげて泣いた。
あんなに泣いたのは久しぶりだった。
私は泣きたかった。
泣きたがってる自分をちゃんと肯定してあげたかったし、「あの人」にも伝えたかった。
そんな私に「あの人」はずっと優しく背中をトントンしながら、自分も同じ気持ちだということを話してくれた。
大きく包み込むような優しさを感じ、私はやっと、安心して自分の心を解放し、素直に泣ける場所を見つけた気がした。